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White Road

マサチューセッツ州ケンブリッジに住む理系院生の日記

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2017年度センター試験 化学基礎(後編)

今回は後編ということで、今年度(2017)を中心に具体的な出題傾向についてです。

 

前編はこちら

sun-chemit.hatenadiary.jp

  

3年間通しての傾向

  • 30分間の試験で大問は2つ、それぞれ7個の小問からなる。
  • 教科書の章との対応としては、第1問は「化学と人間生活」「物質の構成」から、第2問は「物質の変化」から出題。
  • 計算問題は3〜4題*1。内訳は年度によるが、物質量の計算(第2問-1)、溶液の濃度計算(第2問-3)はほぼ必ず出る。
  • 第2問では、後半4題で酸塩基が2題酸化還元が2題というのが目安。
  • 難易度は、初年度の2015は明らかに簡単で、2016と2017は同程度。

実験重視の傾向

2016年度本試験の「ふたまた試験管」には驚かされましたが、今年度も第1問問6で「アンモニアの噴水」という意外な出題がありました。

対策しておくべき実験操作は、大きく分けて次の3つです。

  1. 物質の分離操作(ろ過、再結晶、蒸留、抽出、クロマトグラフィー、昇華)
  2. 中和滴定(特にガラス器具の洗い方、指示薬は頻出)
  3. 気体の捕集法

先に挙げた2つは化学基礎の教科書に載っていないこともありますが、気体関連であるという共通点があります。気体の製法に関しては、余裕があれば理系範囲にまで踏み込んで対策をしておくとよいでしょう。

また、物質の分離についてはこれまでに蒸留(2015追)とろ過(2016追)が出ています。今後、抽出で分液漏斗の使い方の正誤問題などがあるかもしれません。

「化学と人間生活」からの出題

追試も含めてほぼ毎回正誤問題として出題されるこの分野ですが、今年も第1問のラストで出題されました。この正誤問題は対策が難しく、苦手にする受験生が多いです(最上位層でも、これを落として満点を逃すという人も)。これは「化学基礎」には無機化学有機化学が分野としてないため、具体的な物質の性質を体系的に学習していないことによります。

同素体の問題を除くと、これまでに性質を問う出題問題が出た物質は次の通りです(複数回出たものは太字)。

  • 2015本試:プラスチック、金属(白金・アルミニウム)、ダイヤモンド
  • 2015追試:合金(ステンレス)、セッケン、気体(塩素)、アスコルビン酸生石灰
  • 2016本試:なし(物質の分離操作の正誤問題)
  • 2016追試:金属(鉄、アルミニウム、水銀)
  • 2017本試:金属(アルミニウム)、気体(窒素、塩素二酸化炭素)、プラスチックセッケン

このように見ると、いくつかの物質が共通しているのがわかると思います。特に、太字の頻出物質は全て学習指導要領の中で明記されています。

これを踏まえると、次の物質の性質を覚えればほぼ十分でしょう。

  • 同素体を持つ単体(S, C, O, P)
  • 代表的な金属と合金(特に鉄、アルミニウムは製法も)
  • 代表的な気体(気体の捕集法、実験装置も出るので関連付ける)
  • 代表的な塩
  • 代表的な有機物質(メタン、エチレン、エタノール、酢酸、ベンゼン
  • 高分子化合物(ポリエチレン、PET、生分解性プラスチック
  • その他(セッケン、酸化防止剤、保存料、甘味料) 

ステアリン酸単分子膜

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第2問の問2では、いわゆる「単分子膜によるアボガドロ定数測定」の問題が出題されました。理系なら一度は解いたことのある問題で、2008年のセンター試験(追試)でも出題されています。物質量、分子量の定義をきっちり理解していれば問題ないものの、文系向けの問題としてはかなり難しいでしょう。また、文字式を用いた計算というのも物理選択の生徒以外にはあまり馴染みがなかったのではないでしょうか。アンモニアの噴水に並ぶ、意外な出題でした。

中和滴定の問題の変化

酸塩基は2題出題され、片方が実験や知識関係、もう片方は数値やグラフが入った滴定の問題ということが多いです。このうち、滴定の方の問題が年々本格化してきています。2017年の問題(第2問-問5)では、指示薬の色が「急激に変化」か「徐々に変化」かによって①滴定されているのかが酸と塩基のどちらか、②酸塩基の強弱はどうか、の2点を判断する必要がありました。中和滴定のグラフが頭にイメージできれば解答できたと思いますが、戸惑った受験生は相当多かったと思います。

このような出題は過去のセンター試験の問題を見ても思い当たる例がなく、出題者の工夫が伺えます。他の分野と比べても特に新たなアイデアの問題が出やすい印象を受けるので、中和滴定(特に滴定曲線)に関しては、特に本質的な深い理解をできるよう意識すると良いと思います。

最後に

以上、今年の問題を中心にセンター化学基礎の出題傾向について書きました。始まってからまだ3年間とはいえ、他の科目に比べると傾向は読みやすい科目だと言えると思います。もちろん、満遍なく全範囲を学習するのが大事ですが、直前期の勉強として、傾向を意識した対策ができると効果的でしょう。

次回は時間ができたときに「化学」(理系範囲)についても分析できればと思っています(化学基礎の倍以上の量があるので、気長にお待ちください…)。ここまで読んでいただいた方、ありがとうございました。

*1:中性子数を求める、電子数を数える、といったものはここでは計算問題として含んでいません。